一文でいうと
暴走するトロッコの進路を切り替えれば5人は助かるが、別線の1人が死ぬ。結果、行為、意図のどれを重く見るかを問う倫理学の思考実験。
短い概要
あなたは線路の分岐器のそばにいます。このままなら前方の5人がひかれます。レバーを引けばトロッコは別の線へ進み、5人は助かりますが、そこにいる1人がひかれます。
多くの人はこの「切替え」ではレバーを引くと答えます。ところが、橋の上から大柄な1人を突き落として車両を止め、5人を救う変形では、拒む人が増えます。人数は同じでも、手段と関わり方が違います。
正解を当てる問題ではなく、自分の判断を支える原則が、条件の変化に耐えるかを調べる装置です。
判断を分ける4軸
5人か、1人か
被害を最小にするなら切り替える、という考え。帰結主義的な直観と結びつきます。
するか、しないか
手を加えて1人を死なせることと、何もせず5人が死ぬことに道徳的な差があるかを問います。
手段か、副作用か
1人の死を5人を救う手段として使うのか、進路変更の予見された副作用とするのかで判断が変わります。
距離と身体性
レバー操作と、人を直接押す行為。同じ人数でも、接触と因果への近さが直観へ影響します。
思考実験として使う4段階
まず直観を記録する
長く考える前に、自分が切り替えるかを答えます。直観は結論ではなく、説明すべきデータとして扱います。
理由を一文にする
「多くを救うべき」「人を手段にしてはいけない」「何もしないのも選択」など、判断を支えた原則を言葉にします。
条件を一つだけ変える
レバーを人を押す行為へ変える、1人を自分の家族にする、確率を加える。どこで判断が変わるかを確認します。
原則の一貫性を点検する
似た場面で同じ理由を使えるか、例外を認めるならなぜかを考えます。直観を消すのではなく、原則と往復します。
この節は全体像をつかむための案内です。作品ページは結末を代替せず、知識ページは確定事項と未解決部分を区別しています。
何が重要なのか
結果だけで決められるか
救われる人数は重要です。しかし結果だけなら、無関係な人を利用する行為まで正当化される危険があります。
人を手段にする違和感
1人の身体や死そのものを道具として使う場合、単なる副作用より強い禁止を感じる人が多くいます。
何もしないことも選択になる
不介入は中立に見えますが、結果を知り、変えられる位置にいるなら、責任がゼロとは限りません。
自動運転や医療の答えになるか
そのまま答えにはなりません。現実には確率、法律、役割、情報不足、複数の代替策があります。トロッコ問題が役立つのは、「人数だけで決めるのか」「意図と副作用を分けるのか」など、議論に隠れた基準を見つける場面です。
知っておきたい
基本情報
- 起点哲学者フィリッパ・フットが1967年の論文で、路面電車を使う事例を提示しました。
- 展開ジュディス・ジャーヴィス・トムソンが後に複数の変形を論じ、「トロッコ問題」として発展しました。
- 分野規範倫理学、行為と不作為、意図と副作用、権利などを考える思考実験です。
- 回答一つの公認正解はありません。理論ごとに重視する理由が異なります。
- 注意簡略化された架空状況なので、回答を現実の政策へ直接移すことはできません。